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医学部長挨拶

医学部長 尾池 雄一
医学部長
尾池 雄一

 山縣和也医学部長の後任として、2023年4月より医学部長を拝命しました尾池雄一です。大変光栄に思いますと共にその重責に身が引き締まる思いです。これまで熊本大学から頂きましたご恩に報いることができるよう力の限り責務を果たしていく所存です。

 沿革にありますように、熊本の地における医学教育の歴史は、宝暦6年(1756年)肥後熊本藩 細川重賢公によって創設された日本初の公立医学校である再春館まで遡ることができ、260年以上に渡り脈々と培われ受け継がれてきたものです。再春館創設時に医学の道を志す者の理念が再春館壁書という形で示されております。要点のみのご紹介となりますが、

  1. 医の道は、人を救う道に基づくものであり、相手の身分や富によって態度や対応を変えてはいけない。
  2. 学生は素直で慎み深く、ともに学び、規則を破ることがあってはいけない。医学以外のこともしっかりと学ばなくてはいけない。再春館では一途に本業である医学を学ぶべきである。
  3. 治療に専念し、学業を怠るものは、たとえ一般の人に信じられても、それは一時的な偶然の幸運に過ぎない。学業に打ち込み、そのことを治療の基準とすべきである。

と記されております。高い倫理観、社会性の涵養、生涯学修の重要性、個人の経験ではなくエビデンスに基づく医療の実践という現代の医学教育に通じる普遍的な価値観が260年以上前に熊本における医学教育の原点である再春館壁書に記されていることは驚くべきことです。また、再春館の流れを汲み1871年に設立された古城医学校では、第一回ノーベル医学生理学賞の有力な候補者であった世界的細菌学者 北里柴三郎先生も学ばれております。

 熊本大学医学部医学科では、再春館壁書に記されている現代の医学教育に通じる普遍的な価値観に加え、画期的な研究成果によって世界の多くの人の命を救った北里柴三郎先生の志を受け継ぎ、「豊かな人間性と高い倫理観を持ち、医学およびその関連領域における社会的な使命を生涯にわたって追求・達成するとともに、変化する時代に対応できる能力を涵養し、地域にも世界にも貢献できる医師・医学者を育てる」ことを使命として、医学教育を実践しております。熊本大学医学部保健学科では、「生命や人間の尊厳に基づく心豊な教養、そして高度な専門知識・技能を備え、チーム医療のスタッフとして活動し、広く社会に貢献できる資質の高い医療者・研究者・教育者の育成」を使命として、医学教育を実践しております。医学というのは、とても奥が深く、かつ幅の広い学問ですが、AIに代表される昨今の科学・技術の凄まじいスピードでの進展に伴い、その深さ、広さも増してきております。それ故、先入観にとらわれることなく、様々な領域をしっかりと勉強し、自分で自分に必要な課題を見付けて主体的に生涯学修していくこと、コミュニケーション能力を磨くことが益々重要となってきております。自分はどんな医師、研究者になりたいか、学び、出会いを通してvisionを描き、それに向かい努力し続けることができる、どのような時代になっても活躍できる人材の育成に努めていきたいと考えております。

 医学教育を担う者の責務、仕事量は益々大きくなっております。また、度重なる改革により想定外の突発的な経費の支出が増えております。運営費交付金が財源となる教育関連の財政基盤には限りがあり、本学を含む多くの国立大学はその対応に苦慮しております。本学においては様々な改革において他大学に遅れをとることが無いように、くま医もん基金(熊本大学医学教育・研究基金)を設立しております。多くの皆様からご寄付頂いており、本当に深く感謝致しております。皆様におかれましては、引き続き、医学部の教育活動への尚一層のご理解、ご支援の程、何卒宜しくお願い申し上げます。

2023年4月