熊本大学医学部医学科教育成果について
近年、 世界的にも医学教育において、「成果基盤型医学教育(Outcome Based Education, OBE)」の考え方への転換が進んでいます。成果基盤型医学教育とは、「医学科卒業生が身に着けておくべき能力(教育成果)を明確にし、カリキュラムをその能力獲得のために構築すること」とされ、教育プロセスよりも到達する教育成果を重視し、医学教育の質の担保が求められる様になりました。
現在、熊本大学医学部医学科の教育成果を策定すべく、平成25年9月に医学教育FDワークショップを開催し、熊大医学部の教育成果原案を作成していただきました。その原案をカリキュラム企画評価委員会、教育・教務委員会、医学科会議にて議論・修正し、平成26年6月に承認されました。その後、改訂を行い、現行の学修成果となっております。
学修成果は、まず7つのコア学修成果(大項目)を挙げています。それぞれにより具体的な学修成果(小項目、合計35項目)を設定しています。
さらに、「熊大医学部生がこの学修成果を獲得するのに、既存の講義・実習がどのような役割を果すか」を示す対応表を作成しています。それぞれの学修成果の獲得について、レベルとして、「JR . 医療や研究の場で、実践的に理解する・実施する」から、「BN. 体験し理解し始める・模擬的に実施し始める」までの4段階及び「NC. 該当学修成果のマイルストーンへの到達要件でない」を設定しています。
熊本大学医学部医学科の教職員、学生の皆様には、この学修成果をしっかり認識していただき、医学科卒業生の皆さんがこれらの学修成果を獲得できるよう、お役立ていただければと考えます。また、これらの成果基盤型医学教育を継続的に向上させていくことにもご助言等頂ければ幸いです。
熊本大学医学部医学科学修成果
平成26年6月25日医学科会議承認
令和5年2月21日医学科会議承認(一部改正)
令和6年9月25日医学科会議承認(一部改正)
学修成果のマイルストーン・ロードマップ(2024~)
学修成果のマイルストーン・ロードマップ(~2023)
学修成果と講義・実習との対応表(旧~2023)
コア学修成果
- A. 豊かな人間性
- B. 基本的診療能力
- C. 自己研鑚とプロフェッショナリズム
- D. チーム医療と信頼される医療の実践
- E. 医科学研究
- F. 国際的視野
- G. 地域医療
学修成果
A.豊かな人間性
熊本大学医学部医学科学生は卒業時に、社会人として相応しい一般常識と教養を身につけ、病める人及びその家族の気持ちを理解した対応がとれる。
- 社会通念に基づいた常識ある行動で、法規及び規則を遵守する。
- 病める人及びその家族を尊重し、誠実、利他的、共感的に対応できる。
- 医学、医療に影響を及ぼす文化的、社会的要因について理解し、説明できる。
B.基本的診療能力
熊本大学医学部医学科学生は卒業時に、医師となるにふさわしい、統合された知識、技能、態度に基づき、全身を総合的に診療するための実践的能力を有する。幅広い疾患の診断論及び治療論を理解し、一部を実践できる。
【基本的知識】
- ヒトの正常な構造と機能、発生およびその経年変化について説明できる。
- 医療や研究の場において、疾患の原因、病態、自然経過、危険因子と予防方法について説明できる。
- 治療の原理(薬物治療、非外科的侵襲治療、放射線治療、外科治療など)について説明できる。
- 疫学、人口統計、環境、行動科学について説明できる。
- 症状から、診断に至るプロセスを網羅的及び系統的に説明できる。
【医療の実践】
- 心理、社会的背景を含む患者の主要な病歴を、患者に配慮しつつ正確に聴取できる。
- 基本的診察手技および検査手技を適切に実施できる。
- 患者の様々な情報を統合しプロブレムリストを作成し、的確な診断を行い、適切な検査計画・治療計画を立案できる。
- 診療の記録を診療録に適切に記載することができる。
- 患者教育の概要を実践的に理解している。
C.自己研鑚とプロフェッショナリズム
熊本大学医学部医学科学生は卒業時に、医師あるいは医学者としてのキャリアを開始し、生涯にわたって学修を継続することができる。高い倫理観をもって、生命の尊厳と人の命と健康を守る医師・医学者としての職責を深く認識している。
【自己研鑚】
- 医療や研究の場において、自己の現状を適切に評価して、目標を設定できる。
- 医療や研究の場において、自己の目標を達成するための方法を考え、自己学習ができる。
【プロフェッショナリズム】
- 患者にとって最善の治療を選択できる。
- 常に自分の知識、技能、行動に責任を持って患者に向き合うことができる。
- 倫理的問題を把握し、倫理的原則に基づいて行動し、医療に関連した規範を遵守する。
- 診療情報を適切に管理・利用することができる。
- 自らのキャリアをデザインし、達成に向けた継続的な学修の重要性を理解できる。
D.チーム医療と信頼される医療の実践
熊本大学医学部医学科学生は卒業時に、医療は患者を中心におき、多職種の医療構成員よりなるチームで実践されることを理解する。患者やその家族、チーム医療構成員などと良好な信頼関係を築くためのコミュニケーション能力を有する。患者に信頼されるために医療安全やインフォームドコンセントが重要であることを理解する。
【チーム医療】
- 医療職種の専門性を理解し、チーム医療における医師の役割を説明できる。
- 医師同士や他職種との信頼関係を築くために、コミュニケーションが重要であることを理解し実践できる。
【患者に信頼される医療】
- 医療を実施する上でコミュニケーションを通じて良好な患者・家族-医師関係を構築できる。
- インフォームドコンセントの重要性を理解し、説明内容を準備できる。
- 患者の安全性を確保した医療を実践できる。
- 医療安全と危機管理について理解し実践できる。
E.医科学研究
熊本大学医学部医学科学生は卒業時に、旺盛な科学的探究心を有し、医学研究の基本を理解し、既存あるいは新たな研究成果を論理的、客観的に評価できる。また、現代医学における問題抽出とそれを解決するための研究計画立案を倫理原則に則って行える。
- 医療や研究の場において、医学的発見の基礎となる科学的理論と方法論を理解する。
- 医療や研究の場において、医学・医療の研究・開発が社会に貢献することを理解する。
- 医療や研究の場において、基礎および臨床研究に関する倫理的事項を理解する。
F.国際的視野
熊本大学医学部医学科学生は卒業時に、社会に対する幅広い視野を有し、国際社会における医療及び保健の現状を理解する。
- 医療や研究の場において、国際社会における医学・医療及び保健の現状を理解する。
- 医療や研究の場において、国際社会に貢献できる語学力および対応力を有する。
G.地域医療
熊本大学医学部医学科学生は卒業時に、地域医療の現状と問題点を認識している。地域住民の健康の維持、増進に貢献するため、地域の保健・医療・福祉・介護及び行政と連携協力できる知識、技能、態度を有する。
- 医療、福祉、介護における社会保障制度について理解し、説明できる。
- 地域の健康・福祉に関する問題と解決策について理解し、それに関する知識を習得する。
- 医療機関ごとの連携だけに留まらず、福祉・介護に関する機関、及び行政における他分野・専門・職種間との連携の重要性を実践的に理解する。
- 熊本県固有の事例を通して、熊本県の地域医療を実践的に理解する。
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