研究部紹介

研究部の概要

 本学では、平成15年4月に、医学・薬学の研究分野を融合した「大学院医学薬学研究部」を発足させ数多くの先端的研究を推進してまいりました。そして、保健学教育部に博士課程を設置することを機に、これまでの医学・薬学融合の「大学院医学薬学研究部」から、さらなる学際的研究の発展を図るため、平成22年1月、医学・薬学・保健学3分野融合の「大学院生命科学研究部」へ改組いたしました。

 現在3部門15分野57研究講座からなる研究特化型の教員組織です。「総合医薬科学部門」では、医学・薬学及び保健学分野の基盤的な学問体系の深化を目指した研究を、「先端生命医療科学部門」では移植医療やゲノム創薬に加え医療技術科学などの先端的研究を、「環境社会医学部門」では、“医学・薬学と社会”、“疾病と環境の関わり”について看護学を通し、生命倫理及び健康と社会に関する先導的研究を推進します。

基本目標

研究と教育

  • 医学・薬学及び保健学における創造的な研究活動によって、生命現象の真理を探究し、それらの成果を医療の実践、疾病の予知・予防に導入します。未知の医学、医療、薬学領域に常に挑戦し、医療・医薬科学の進展に貢献します。
  • 自主性を重視する教育により、医療・医薬科学での研究成果を次世代に伝え、医科学研究者、薬科学研究者、生命倫理研究者、並びに指導的医療人を育成します。

社会的貢献

  • 研究活動によって得られた知的財産を社会に還元し、人類の健康と福祉の発展に寄与します。
  • 医療・医薬科学領域での国内外における指導的人材の育成を図り、これらの人材を通じ社会の発展に寄与します。

基本方針

研究と教育

  • 生命科学並びに医療・医薬科学の基盤的、先進的研究を促進し、現在および将来の医療が抱える諸課題に応え得る体制の整備と充実を図ります。
  • 医学・薬学及び保健学の伝統の中で育まれてきた知的財産を正しく継承するとともに、先進的な知への挑戦をなし得る教育体制を整備し、高度な大学院教育を推進します。

運営

  1. 管理・運営は公正と正直を旨とし、構成員の自律性と自発性に基づく学術研究を支援し、学問の自由を保障します。
  2. 構成員が運営原則の策定ならびに実現にそれぞれの立場から参画することを求めます。
  3. 構成員の研究活動、教育実践に関して主体的に自己点検・評価を行い、また外部からの批判的評価を積極的に求め、開かれた大学院研究部を目指します。

部門・分野

総合医薬科学部門

医学と薬学における基盤的な学問体系を融合させてその深化を図り、先端研究への活用の道を切り開くことを目的とする。

代謝・循環医学分野

肥満、糖尿病、メタボリックシンドローム、心臓血管疾患をはじめとする代謝・循環器疾患の成因や病態の分子機構を解明する。疾患研究を通して代謝・循環制御に関与する新規分子を同定し、その役割を解明する。これらの成果を基盤として、新規予防・診断・治療法の開発研究を行う。

生体機能病態学分野

人体の生理的ならびに病理的状態を、分子から細胞、組織、器官、さらには個体のレベルまで、構造と機能の両面より解明し、併せて疾患の治療法を開発するという、医学の基盤をなす領域の研究を担当する。

感覚・運動医学分野

人体が外環境を認識し侵襲を避けながら、適切な行動を行うために必須の感覚・運動器官系の構造と機能を、生理的状態と、過侵襲状態や他の病理的状態において解明し、治療法を開発する領域の研究を担当する。

医学教育学分野

将来の医学・医療の質向上を目指し、熊本大学医学部医学科の卒前医学教育の改革・改善を総合的にマネージメントする。さらに医学教育全般に関する問題点を抽出し新たな教育カリキュラムや教育技法の研究開発を行う。

生体情報分析医学分野

生体の細胞、組織、臓器、器官における生理的変動と病的変動の違いを、放射線、超音波、光科学などの物理学的手段による画像検査診断、組織学、病理学、分子病理学的手法による形態検査診断、あるいは生化学、分離分析学的手法による生体成分の定性、定量分析の結果から、病態の究明と適切な診断治療法の開発研究を行う。

薬物治療設計学分野

新たな抗ウイルス薬や生理機能人工代替物質の開発を行う一方、患者個人間の遺伝子多型や遺伝子発現の差さらには年齢差などに対応できる薬物投与の最適化法の確立に関して、薬物動態解析や薬物デリバリー技術開発などの研究領域を担当する。

創薬科学分野

生理活性物質、受容体、酵素などの機能的生体高分子に対する薬品資源の探索と、高選択的合成法の開発を行うとともに、得られた薬品と標的生体分子間の相互作用に関して、実験的な検討に基づく理論構築を行う研究領域を担当する。

先端生命医療科学部門

先端生命科学とそれに直結した先進医療を推進するため、それぞれの専門分野における先導的研究を遂行することを目的とする。

感染・免疫学分野

病原性微生物の感染や病原性などを分子レベルで解明することと共に、感染症発症の分子機構について研究する。さらに微生物と悪性腫瘍に対する生体防御機構を担う免疫系を分子生物学的手法により研究し、免疫疾患の病因・病態を解明する。以上の研究成果を感染症ならびに免疫疾患の予防、診断および治療法の開発に資する領域を担当する。

脳・神経科学分野

脳と神経系の発生から老化までの間における、正常状態から病理的状態までの構造と機能を解明すると共に、脳の高次機能の顕現である人格と社会的行動に関しても、異常性が出現する機序を明らかにする研究領域を担当する。

がん医学分野

がんの発生に関わる分子機構、増殖・分化・転移などの調節機構、新しいがん関連分子の探索、がん免疫、ホルモン感受性機構などを研究するとともに、新たな診断マーカー、分子標的治療、ならびに免疫療法の開発を目指した研究を担当する。

医療技術科学分野

分子・細胞レベルから組織・器官・個体レベルにわたる生態情報の解析を行う。

成育再建・移植医学分野

遺伝・生殖、発生、成長そして再び遺伝・生殖へと続くヒトの世代交代に関する医学的側面を総合的に研究する一方、各世代を担う個体が、先天的あるいは、悪性腫瘍や生活習慣などによる後天的異常を排除修正し、救命や、より健全な機能回復を目指して、切除・再建外科や移植外科領域、小児から成人に至る成長発達、難病の診断と治療の研究、を行う。

分子機能薬学分野

薬物の作用機構を、生体高分子の構造解析、分子修飾解析、プローブ化合物解析などにより明らかにしつつ、計算機支援システムを活用してそれを普遍化する理論を構築するとともに、薬剤感受性の個人差を蛋白分子構造の差から解明する研究を担当する。

環境社会医学分野

生命倫理の観点を含めて、医学と社会、並びに疾病と環境のかかわりを科学的に究明することを目的とする。

環境生命科学分野

自然や社会構造の変化に伴う生活環境の推移が、人の健康状態や疾病構造、生命倫理的価値観、法医学などにどのような環境を与えるのか、最新の医科学を活用して分析し、適切な対処法を社会に提言していくための研究を担当する。

環境分析科学分野

環境中に存在する金属、有機分子、さらにはウイルスにまでわたる各種有害因子について分析する手法を確立し、生体に対するそれらの作用を分子レベルで解明することにより、各有害因子に対処できる、新たな予防・治療薬の合理的開発に関する研究を担当する。

看護学分野

疾病に罹患した人および健康な人を対象とした身体的および精神的支援について、ケア理論、看護技術、教育技法等に関する研究を推進する。