本学では、平成15年4月に、医学・薬学の研究分野を融合した「大学院医学薬学研究部」を発足させ数多くの先端的研究を推進してまいりました。そして、保健学教育部に博士課程を設置することを機に、これまでの医学・薬学融合の「大学院医学薬学研究部」から、さらなる学際的研究の発展を図るため、平成22年1月、医学・薬学・保健学3分野融合の「大学院生命科学研究部」へ改組いたしました。
現在3部門15分野72研究講座からなる研究特化型の教員組織です。「総合医薬科学部門」では、医学・薬学及び保健学分野の基盤的な学問体系の深化を目指した研究を、「先端生命医療科学部門」では移植医療やゲノム創薬に加え医療技術科学などの先端的研究を、「環境社会医学部門」では、“医学・薬学と社会”、“疾病と環境の関わり”について看護学を通し、生命倫理及び健康と社会に関する先導的研究を推進します。
医学と薬学における基盤的な学問体系を融合させてその深化を図り、先端研究への活用の道を切り開くことを目的とする。
肥満、糖尿病、メタボリックシンドローム、心臓血管疾患をはじめとする代謝・循環器疾患の成因や病態の分子機構を解明する。疾患研究を通して代謝・循環制御に関与する新規分子を同定し、その役割を解明する。これらの成果を基盤として、新規予防・診断・治療法の開発研究を行う。
人体の生理的ならびに病理的状態を、分子から細胞、組織、器官、さらには個体のレベルまで、構造と機能の両面より解明し、併せて疾患の治療法を開発するという、医学の基盤をなす領域の研究を担当する。
人体が外環境を認識し侵襲を避けながら、適切な行動を行うために必須の感覚・運動器官系の構造と機能を、生理的状態と、過侵襲状態や他の病理的状態において解明し、治療法を開発する領域の研究を担当する。
将来の医学・医療の質向上を目指し、熊本大学医学部医学科の卒前医学教育の改革・改善を総合的にマネージメントする。さらに医学教育全般に関する問題点を抽出し新たな教育カリキュラムや教育技法の研究開発を行う。
生体の細胞、組織、臓器、器官における生理的変動と病的変動の違いを、放射線、超音波、光科学などの物理学的手段による画像検査診断、組織学、病理学、分子病理学的手法による形態検査診断、あるいは生化学、分離分析学的手法による生体成分の定性、定量分析の結果から、病態の究明と適切な診断治療法の開発研究を行う。
新たな抗ウイルス薬や生理機能人工代替物質の開発を行う一方、患者個人間の遺伝子多型や遺伝子発現の差さらには年齢差などに対応できる薬物投与の最適化法の確立に関して、薬物動態解析や薬物デリバリー技術開発などの研究領域を担当する。
生理活性物質、受容体、酵素などの機能的生体高分子に対する薬品資源の探索と、高選択的合成法の開発を行うとともに、得られた薬品と標的生体分子間の相互作用に関して、実験的な検討に基づく理論構築を行う研究領域を担当する。
先端生命科学とそれに直結した先進医療を推進するため、それぞれの専門分野における先導的研究を遂行することを目的とする。
病原性微生物の感染や病原性などを分子レベルで解明することと共に、感染症発症の分子機構について研究する。さらに微生物と悪性腫瘍に対する生体防御機構を担う免疫系を分子生物学的手法により研究し、免疫疾患の病因・病態を解明する。以上の研究成果を感染症ならびに免疫疾患の予防、診断および治療法の開発に資する領域を担当する。
脳と神経系の発生から老化までの間における、正常状態から病理的状態までの構造と機能を解明すると共に、脳の高次機能の顕現である人格と社会的行動に関しても、異常性が出現する機序を明らかにする研究領域を担当する。
がんの発生に関わる分子機構、増殖・分化・転移などの調節機構、新しいがん関連分子の探索、がん免疫、ホルモン感受性機構などを研究するとともに、新たな診断マーカー、分子標的治療、ならびに免疫療法の開発を目指した研究を担当する。
分子・細胞レベルから組織・器官・個体レベルにわたる生態情報の解析を行う。
遺伝・生殖、発生、成長そして再び遺伝・生殖へと続くヒトの世代交代に関する医学的側面を総合的に研究する一方、各世代を担う個体が、先天的あるいは、悪性腫瘍や生活習慣などによる後天的異常を排除修正し、救命や、より健全な機能回復を目指して、切除・再建外科や移植外科領域、小児から成人に至る成長発達、難病の診断と治療の研究、を行う。
薬物の作用機構を、生体高分子の構造解析、分子修飾解析、プローブ化合物解析などにより明らかにしつつ、計算機支援システムを活用してそれを普遍化する理論を構築するとともに、薬剤感受性の個人差を蛋白分子構造の差から解明する研究を担当する。
生命倫理の観点を含めて、医学と社会、並びに疾病と環境のかかわりを科学的に究明することを目的とする。
自然や社会構造の変化に伴う生活環境の推移が、人の健康状態や疾病構造、生命倫理的価値観、法医学などにどのような環境を与えるのか、最新の医科学を活用して分析し、適切な対処法を社会に提言していくための研究を担当する。
環境中に存在する金属、有機分子、さらにはウイルスにまでわたる各種有害因子について分析する手法を確立し、生体に対するそれらの作用を分子レベルで解明することにより、各有害因子に対処できる、新たな予防・治療薬の合理的開発に関する研究を担当する。
疾病に罹患した人および健康な人を対象とした身体的および精神的支援について、ケア理論、看護技術、教育技法等に関する研究を推進する。